2024年パリ五輪で、陸上フィールド競技初の金メダルを獲得した北口榛花選手が記憶に新しい「やり投げ」競技。同じく2024年12月26日(木)・27日(金)、エコパの投てき場には静岡県内全域から8校60名もの高校生やり投げプレイヤーが集まり強化練習を行う「やり投げ講習会」が開催された。昨年に引き続き、ズキアスリートクラブの選手による指導を受けることができる本講習会は、第二回目の開催となる。
昨今、日本人選手の活躍により注目度が高まっているフィールド競技だが、競技人口はトラック競技と比べて少ない傾向がある。特に「やり投げ」は専門性が高いため、指導者の確保や設備の整った環境が必要不可欠。しかし、高校の部活ともなると、各高校に選手が数名という部活もあり、切磋琢磨する環境や専門的な指導ができる顧問が限られてしまい、十分な練習環境を整えるのは困難を極める。
そんな中、昨年企画・開催されたのが、国内有数の投てき練習場をもつエコパでの「エコパ投てきウィーク」だ。選手・指導者を一同に集めることで、基礎的なアップ練習から実践的な動きまで、ライバルたちと切磋琢磨しながら、専門的な指導を受けることができる機会を提供。参加した選手からは、「日本のトップクラスで活躍する選手の、アップ~投擲フォームを間近で感じることができた。」、「一人ひとりに対する具体的なアドバイスを受けたことがモチベーションにつながった。」と、評価が高く、今回の第二回開催につながった。
今回は「やり投げ」競技に特化、一部選手は宿泊・ケアも伴う2日間の合宿形式の講習会を開催することで、より質の高い練習機会の提供を試みた。スズキアスリートクラブからは、新井涼平選手、長沼元選手、斉藤真理菜選手の、日本のトップクラスで活躍する現役選手3名が、ときにはマンツーマンでフォームを手取り足取り教えるなど、積極的な指導にあたった。講習会に参加した高校生たちは、普段の練習とは異なるメニューに触れながら、楽しくトライ&エラーを繰り返す…スズキアスリートクラブ3選手の丁寧かつ積極的な指導により、活気があり雰囲気のよい講習会となった。
<講習会コンテンツ※一部>
❶二人一組でストレッチ
肩や肘の怪我の予防になる、肩甲骨を柔らかくするオリジナルメニューやブリッジ・倒立などに一工夫加えた体幹を意識したプログラムを実施。
❷ジョギング&ラン
投げにおける効果的な走行姿勢・体勢を意識させる腿上げや走り方の型を学ぶ。身体を捻りながらも、上半身を安定させるといった基本的な内容だが、選手は四苦八苦。身体のバランスの重要性を体感できる、様々な走り方にもチャレンジ。
❸チューブトレーニング
ウエイトでは付かないインナーマッスルを鍛えるトレーニング方法を学ぶ。より遠くに飛ばすための力を身に付けるためには欠かせないもののよう。参加した高校生の中でチューブを持っている選手は2名しかおらず、初めての体験だった選手も多かった。その後、チューブを槍に見立て、投げる際の正しいフォームや力の入れ具合などを実践。パワーを効率よく槍に伝えるためのメカニズムを選手それぞれが身体を使って学んだ。
❹ボール投げ
槍投げのフォームでボールを使って投げるトレーニング。単純に腕の力で投げるのではなく、身体全体のバネや正しいフォームを崩さずに投げる意識を持って片手、両手で投げることで、如何に力を上手くボールに伝えるかの感覚を掴む。
❺助走なしでの槍投げスローイング
最大スリークロスステップでの投てき。❷~❹で学んできた基本姿勢を頭に置いて投げる。遠くに投げようとするとどうしても槍が上向きで飛んでいくところを、地面と平行に鋭く投げることを何度も繰り返しながら体で覚えてもらうようなイメージ。スズキアスリートクラブの選手が上向きで投げた場合と前向きに投げた場合での飛距離や槍が描く放物線の違いを見せてもらったことで、より理解が深まるような実践的練習となった。
宿泊者を対象に、静岡県合宿において初の試みとなる、ケアサポートを提供。陸上競技を専門とするトレーナー2名がじっくり時間をかけてケアを実施した。施術を受けた選手は、全員はじめての経験だったようで、翌日の身体の軽さや可動域の拡がりを実感。「ケア」という観点でも学びの機会となった。
多くの選手が大学以降の競技継続を断念してしまうというフィールド競技。少しでも多くの選手が、自己の成長や競技の魅力に気づく機会を提供することで、今後もエコパから陸上競技全体が盛り上がっていくことを期待したい。
【主催】
静岡県陸上競技協会
【日程】
2024年12月26日(木)・27日(金)
12月26日(木)
・12:00 受付開始(エコパ補助競技場南器具庫内)
・12:45 開校式(エコパ投擲場)講習会開始
・15:45 講習会終了
・16:00 質問会開始(エコパスタジアム内)
・17:00 質問会終了 ※宿泊希望者はホテルへ移動
・18:00~21:00 【宿泊者限定】スポーツトレーナーによる個別ケア相談会(施術あり)
12月27日(金)
・08:45 集合(エコパ投擲場)
・09:00 講習会開始
・12:00 講習会終了 解散
【会場】
エコパ投てき場
【対象者】
静岡県内高校生やり投げ選手
【参加人数】
8校60名
【指導者(スズキアスリートクラブ)】
新井涼平 選手
・自己ベスト 86m83
・2024シーズンは83m37を海外で記録。日本選手権も優勝
・2016リオデジャネイロオリンピックに出場
・世界選手権では、2015北京大会9位 2017ロンドン大会出場 2019ドーハ大会出場
長沼 元 選手
・自己ベスト 79m99
・2024シーズンは79m41を記録。アスリート ナイト ゲームズin福井の優勝や、織田記念の準優勝
斉藤真理菜 選手
・自己ベスト 62m37
・2024シーズンは、59m70を記録し、パリオリンピックに日本代表として出場されたほか、アスリートナイトゲームズin福井と、オールスターナイトゲームズで優勝
・2023ブダベスト世界陸上、2017ロンドン世界陸上に日本代表として出場
・2018ジャカルタアジア大会4位。日本選手権2023、2018優勝